「っつ〜・・・」
「シンってば、またさんに叩かれたの?」
赤くなった頬を見て、ルナマリアがため息をつく。
「何だよ、あの女は!」
「シンの口の利き方に問題がある、という事だろう。」
「オレのどこに問題があるって言うんだ!!」
「アスランさんに対する口の利き方に決まってるじゃない。」
同僚である二人の視線を受け、シンはバツが悪そうに視線をそらすと熱を持った頬に濡れタオルを当てた。
バシン
人気のない廊下に響く乾いた音。
「・・・全く、何度言えば分かるの?」
「何の事だかサッパリ分かりませんね!」
少し上から見下ろされる燃えるような赤い瞳を受けても、青い瞳は凪いだ海のようにその色を変えない。
「じゃぁ分かるまで何度でも教えてあげる。」
パンッ
先程より少し軽い音。
その音がシンの頭の上に置かれたファイルだと認識するまで、少し時間がかかった。
「だから何すん・・・」
「ファイルに目を通して、貴方の上司が誰だかキチンと把握する事ね。」
「はぁ?」
「誰が貴方を認めても、軍の地位は変わらない。」
「・・・何の事だよ。」
「ザフトの軍事教育も地に落ちたわね、って言いたいだけ。」
それだけ言うと、は高いヒールの音を響かせながらシンに背を向け歩き出した。
その姿に怒りを露わにしたシンは頭の上に乗せられたファイルを床に叩きつけ、を指差し叫んだ。
「お前何様だって言うんだよ!!」
振り向いたは少し寂しげな表情を浮かべながら、右腕に添えた左手を強く握り締めた。
「今は・・・ただの女、よ。でも・・・貴方より、戦場の厳しさも現実も見てきた。」
「え?」
「あたしの事が知りたいなら、ザフトの過去のデータを探しなさい。上司や目上の人間に対しての礼儀が出来ていなくても、それくらいは出来るでしょう。」
いつものように強気な笑みを浮かべてシンにそう言い放つと、は今度こそまっすぐ前を見て歩き出した。
「ったく、人の顔やら頭やらパンパン簡単に叩きやがって・・・」
「彼女の言う事は間違っていないからな。」
「レイまでそんな事言うのかよぉ・・・」
机の上に頭を乗せて落ち込んだ様子のシンを見て、レイがとあるデータを印刷した紙をシンに差し出した。
「何これ?」
「彼女の過去の軍事履歴だ。」
「・・・見たくない。」
「いや、お前は一度見ておいたほうがいい。」
「・・・見たくないっ!!」
「じゃぁ気が向いた時に見るといい。ただの女性じゃない事が分かる。」
そう言うと先に部屋を出たルナマリアの後を追うかのように、レイも食堂へと向かった。
残されたシンは部屋のロックを確認すると、レイが残していったデータへ手を伸ばす。
「・・・」
そこに記されていたデータは、予想以上の衝撃をシンに与えた。
「あの人も両親を、亡くしてる?」
両親亡き後、幼いながらも医療学校に特別推薦枠で入学し、スキップであっという間に卒業。
その後、あちらこちらの病院で研修を受けた後・・・軍へ入隊。
その上、ザフトにおいては現在フェイスのアスラン・ザラも所属していたクルーゼ隊の秘書と今の艦内での医療班の柱となるシステムを作った、と記してある。
地上で行う治療と艦内で行う治療の違いを明確化させ、より多くの負傷者を助けられるよう様々な試行錯誤を繰り返し、作り上げられたシステムを反映させて作ったのがミネルバの医療室だ。
「そんな凄い人・・・だったのか。」
呆然となりつつも、とある記述に目を奪われた。
――― アスラン・ザラの婚約者
「あの人、何人の婚約者がいるんだよ。」
プラントの歌姫、ラクス・クライン
オーブのカガリ・ユラ・アスハ
そして・・・目下の所、誰よりもオレの頭を叩いてくれる、・
「そういやオレ、あの人の笑った顔って見た事ないな。」
携帯電話を手に、残されているマユの写真を眺める。
「・・・笑顔が、一番いいのにな。」
ポツリと呟き思わず口元を押さえる。
「って、何言ってんだオレ!?」
勢い良く起き上がり、マユの携帯と一緒にのデータを机の引き出しに入れる。
「あー、きっと腹減ってるからだな!うん!!早くメシ食いに行こう!」
叩かれた頬が先程より熱を持っている。
けれど、それは叩かれていない頬も同様だ。
食堂へ向かいながら、シンはふとある事を思いつく。
「・・・取り敢えず、アンタはやめてみるか。」
けれど、シンの努力もむなしく、結局アスランに敬語を使えないシンは、再びに叩かれ続けるのであった。
スランプ続きの6月、月末に入る今頃書けたのがこんな意味不明な話(苦笑)
手元を見れば手直し含めUP出来るの話は死ぬほどあるのに!
話の流れが止まってる所為で何もUP出来ない(><)うたた寝もOthersもっ!!
・・・という訳で、いつものペースが戻るまで、順序関係ない物をこうして更新していこうかなぁと思ってます。
えーっと、私は別にシンが嫌いではありません。
好き嫌いでいけば「けっ」と思うぐらい嫌いなキャラもいますから(笑)
寧ろステラとセットで二人には幸せになって・・・欲しかったなぁ〜(遠い目)
じゃなくてっ!!えー、この話はただ単に、シン・アスカくんに目上(または上官)に対して礼儀を覚えてねんwと言う私個人の思いを書き連ねただけです。
ですが、シン好きな方が不快に思ってしまったらごめんなさいm(_ _)m
今後もシンはペシンペシン叩かれる事となりますが、愛情を込めて叩いてますから!!(おいおい)
一応これは「if〜もしも〜」って事なので、期間限定にさせて下さいね。
今の所、終了は未定としてますが・・・まぁ取り敢えずDESTINYが終わるまで、かな(笑)
私の気が向いたり、リクエストがあったりしたら普通に置くようにします・・・多分?